誤った食べ方で二重顎に
3歳までに正しい食べ方を身につけることが、たいせつです。それは、子どもの食べ方がその後の歯並びの形成、顎の骨の発達などにも少なからず影響を及ぼすことがわかっているからです。
それはどういうことか、舌の動きに着目してみましょう。
食べ物を飲み込むときに、舌はどのように動くのでしょうか。ゴクンと飲み込んだ時、舌は上顎に押し付けられるように挙上して、咀嚼した食べ物を喉へと送り込みます。同時に気道が塞がれ、食道が開き、食べ物が正常に飲み込まれていく。こういったことが一瞬にして、同時に行われています。
舌というのは筋肉の突起物ですが、ほかの部位の筋肉と比べるとかなり特殊な構造を持っています。通常、筋肉は両サイドが骨とつながり、固定された状態になっているのですが、舌は片方だけ、すなわち根元の部分だけが舌骨につながっているのです。
この舌骨もまた、独特の構造をもっています。舌骨は、ほかのどの骨とも接触せずに、浮いたような状態で存在しています。
では、そのような不安定な状態で、なぜ同じ位置に留まっていられるのでしょうか。それは、顎の筋肉が舌骨をしっかりと支えているからです。舌骨は筋肉によって支えられ、その舌骨に、舌がささえられている。すなわち、筋肉の働きによってその位置が保たれています。
したがつて、正しい食べ方で筋肉をよく運動させないと、舌骨を支えていた筋肉が弱り、舌骨の位置が徐々に下がっていってしまいます。二重顎はこのようになっていくのです。高齢者に二重顎が多い理由は、加齢に伴って筋肉がよわり、舌骨が下がりやすくなっているからです。
この舌骨の低下がなぜ問題かというと、それが嚥下機能に悪影響をきするためです。食べ物を飲み込むとき、この舌骨はぐっと上がり、連動して気道が塞がれますが、舌骨のもともとの位置が低いと、飲み込むときに十分に上がらず、その分だけ気道の閉鎖が不十分になってしまって、誤嚥がおきるのです。
これは、高齢者だけの話ではありません。舌や顎の筋肉をうまく使えていないと、子どもでも二重顎になります。当然、飲み込みも上手にできません。